南部縦貫鉄道の思い出
カツミのED75も完成が近づいて、どんな列車を仕立てようかな?とか、どんな風にディスプレイするか、などいろいろ思いを巡らせ始めました。手元にあるモデルの中で関連付け出来そうなものにこんなのがあります。
あまりにも有名な南部縦貫鉄道のレールバスです。この車両のモデルは路線休止の頃にN・16番とも各社から発売されましたが、これはムサシノモデルから発売されていたブラスモデルです。 運転台のシフトレバーまで再現されていたりして、細部まで作りこんでありますが、走行の方も低速が効いてなかなか良い感じです。
このレールバスを初めて見たのは1970年代の後半でしたが、実際に乗ったのは1989年の5月のことでした。何とはなしに気になっていたものの、場所が場所だけにわざわざ乗りに良くチャンスもなかなか出来なかったのですが、この時はGWということで、北海道はまだ寒いし、時間的には余裕があるしということで訪ねてみたのです。
路線開通当初から旅客輸送は見込めないということで、このようなレールバスが導入されたわけですが、この頃はまだ路線の廃止についての話題は全くと言って良いくらい出ておらず、数えるほどの乗客しかいないのにツーマン運行という実に不思議な路線でした。
野辺地駅で東北線の列車を降りると、駅の片隅にある縦貫鉄道ののりばへの跨線橋が架かっていて、床をギシギシ言わせて社線のりばへと進むと、お目当てのレールバスは既に到着していて、軽やかなアイドリング音を響かせながら、発車を待っていました。のんびりとした昼下がり、人気の無い駅にゆったりとした時間が流れていました。ホームの上にあった事務室で乗車券を求めると、乗車券の在庫が切れているようで、車内で車掌から買ってくれということでした。
発車までしばらく時間があったので、初めて間近で見るこのケッタイな乗り物をつぶさに観察してみました。三角窓の折り戸も昔バスにあったなあ、と懐かしく思ったり、前後方向に操作するスロットル、床にはシフトレバーとクラッチペダルまであって、一体どんな風に操作して走るのだろうか?とますます興味がわいてきました。
やがて時間が来ると運転士と車掌がやってきて、発車です。運転士はバスよろしくシフトレバーを操作してギアを入れますが、もう散々使い込まれた車だけにシフトレバーの遊びも大きく、運転士はシフトチェンジの度に大げさな?動作で操作をしていました。1速で発進するのですが起動するとすぐにセカンドへチェンジするのが通常のバスと違っていました。
発車すると、それまでの穏やかなアイドリングとは一変して、ものすごい振動と縦揺れ、2軸車ならではの、タンタン、タンタンというジョイント音、何となく北海道を思わせる茫漠とした風景が印象的でした。
ここには、ほかものどこの鉄道にも無い不思議な世界が広がっていたのです。すっかり魅せられた管理人はその後も何回か行きましたが、休止が発表されて人が集まるようになると足が遠のきました。もうあの本来の縦貫の世界には会えないと思ったからです。
ED75の列車はこんなすばらしいところへも連れて行ってくれたのです。
七戸の駅で記念に求めた絵葉書にはED75の普通列車と併走するレールバスの写真も入っていました。両者とももう過去のものになってしまいましたが、どちらも楽しい鉄道の旅の主役だったことに違いありません。
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