今年もまた「遠出リハビリ」として北海道へ行ってきました。旅行というのは、健康な人には分かりにくいのですが、脳卒中で片麻痺を拾ってしまうとかなり困難なものになるのです。ホテル一つとっても、毎晩泊まる部屋の構造などが違うわけですし、鉄道にしても地方へ行けばバリアフリー設備などないところも多いですね。倒れた時は、「1年後には何としても列車で北海道へ行ってカニを食べよう」という密かな目標があったのですが、ひとつずつ課題を検討すると困難なものばかりでした。まずは自分で歩けなければならないし、着替え、風呂といった日常生活動作も自立していなければなりません。その上で普段乗らないような乗り物に乗ったり、知らない街を歩いたりすることになるのですから。厚木のN沢病院の強烈なリハビリ訓練の成果で、1年後にその目標は何とか達成できたわけですが、その時はアポロ11号の月面探検のようなもので、何とか行ってくることが出来た、という感じでした。今年もまた去年と比べてだいぶレベルアップしているのを実感できました。
やはり反復してやるのが大事なようで、回を重ねるごとにそれぞれの場面での動作も少しずつ軽くなって来ています。列車に乗っていても結構課題があるものです。

例えば食堂車。食堂車は通路が中央部なので掴まるところがありません。管理人は杖なし歩行を取り戻しましたが、一度平衡感覚も失いましたから、走行中の車内を掴まらずに歩くというのは困難を極めました。実際に出てみないと分からない事例の一つです。最近は食堂車の中もだいぶ上手く歩けるようになりましたが、どうやら半年以上経っても、取り戻せるものは結構あるということのようです。

「北斗星」車内で一番難しいのがこれ。走行中に立った状態で体を洗ったりするわけですが、これは乗る度に意識してやるしかなかったですね。揺れる上に足元が滑りますから、片麻痺を拾ってこれが使えるようになる人は殆どいないのでは、というレベルだと思います。これもまた、今回はほぼ実用レベルでこなせていました。

北海道へ入れば、バリアは続々出て来ます。列車とホームの段差がすごいですが、こんなのは序の口です。リハビリ病院の階段訓練のようなものです。ただ、キハ40の手すり、乗務員室仕切りの側は縦のものが付いていないので、これは要注意です。内地型の2000番台も同じですが。車椅子ではまず乗れませんし、杖や装具を使用していれば、かなり危険なシチュエーションということが言えると思います。

あとよくあるのが、舗装していない砂利のホーム。

舗装と砂利が混在しているといういやらしいパターンもあります。砂利道歩きに関しては、去年N沢病院のPTに、雪道対策の訓練方法を教えて貰った時に、砂利道訓練をやると良いということだったので、仕入れに行くときなどに、練習に適した場所があるので、そこで訓練しました。雪道も、手も足も出ないという状態からは脱出しましたが、副産物として当然ながらこうした砂利ホームでの歩行などが去年と比べて段違いに改善していました。

10分停車の間に砂利のホームとガタガタの跨線橋を渡って写真を撮ってくるといういつものミッションも、サクサクとした感じでこなせました。

バスも、中古車が多いですから、ノンステップなどはなく、路線タイプもツーステップですし、長距離用はあえてバリアだらけにしたようなハイデッカーだったりします。終点のバスターミナル?がこんな具合の砂利だったりするのですが、ホームと違って、砂利の粒が不揃いでさらに歩きにくかったりします。このあたりも、砂利道訓練の成果が発揮されて、今年はだいぶ意識せずに歩けていました。
旅行といえば食事ですが、これも気が付きにくいですが駅弁というのは普通のボックスシートの列車では両手が使えないと食べられない、ということがあります。

さすがにこれは最初の頃に気付いたので、今はほぼ問題なく食べられます。

そして、これは応用編。蟹をハサミでカットして殻を剥いて食べるというものです。毛ガニなどは甲羅を剥がして味噌も舐めたいですね。これもほぼ問題ないレベルになっています。食べ物絡みのリハビリは特に効果があるようです。蟹を食べ過ぎて脳卒中が再発した、という話は聞いたことがありませんから、まあこれで良いのでしょう。作業療法リハビリとしてはかなり高度なレベルだと思います。
旅行というのは、ここはぜひ行っておこうとか、今でなければ、というのも結構あります。そのために時間を調整したりとかも出てくるのですが、今回非常にタイムリーだったのがこれです。

2本の列車になりましたが、最後に旭川から小樽まで711系の列車を選んで乗ってきました。その後すぐに、8月末のダイヤ改正で711系の運用が半減するということが発表されました。最後の岩見沢~小樽間を旧塗装車で締めくくれたのも良かったと思います。
反復リハビリの一環ですが、だいぶレベルアップしているようで、リハビリというよりは「完全に旅人になり切れるか」というのが新たなテーマになりつつあるようです。
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