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2006年9月 8日 (金)

「創る楽しみ」はどこへ・・・

 今年もまたこれからNゲージでは小田急ロマンスカーがいくつか出てきます。ロマンスカーが出てくれば一般の通勤車も欲しいと言うのは人情ですね。

 通勤車に関してはマイクロエースが2600・4000・5200形をやりましたが、いずれも同社お得意の「一回こっきり」ということで、既に市場では見かけません。割合再生産がかかるのはグリーンマックスのキットでしょうか。通勤車の中でもアイボリーにブルーの帯を巻いた鋼製車は人気があります。

 グリーンマックスのキット、最新の3000形は一体箱型ボディーの塗装済みキット、1000・2000形は塗装済みの板キットですが、鋼製車についてはかなり昔からある無塗装の板キットしかありません。

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 ロマンスカーが来た時にディスプレイの脇役にということで、そのGM板キットを組んでいます。最近はあまりキットを組まなくなったとよく言われますので、板キットの組み立て方紹介と言う意味で店の中でみなさんに見ていただきながらやっているのですが、開口一番、「これ出来上がったらいくらで売ってもらえますか?」と言われる方が多いんですね。

 で、「これだと、4両作って、最低でも1万7,8千円は頂かないと合わないですねぇ」と言う風に答えるのですが、すると「えっ!何でそんな高いの?」と言う話になります。

G2

 当然GMの板キットは車体の前後・左右・屋根などを板状のパーツを組み合わせて箱にし、次にスプレーで塗装をするわけですが、塗装工程も何色かある場合には1色目を塗ったら完全に乾かし、次に2色目を塗る部分に合わせてテープでマスキングをし(これが一番大変です)、再びスプレー、さらに3色目・・・と言う具合に進むのでものすごく手間がかかるのです。当然時間もかかるし、作業の技術料的な要素も含まれてきますね。

 通常のメーカー完成品を見ると、最初から箱型になっているボディーを機械で塗装・印刷をし、最後に窓ガラスやベンチレーターなどをパチパチとはめ込んで組立て、上下をハメ合わせて完成ですから、パートのおばさんなんかでもあっという間に出来てしまうのです。特別な技術も要りません。

 でもそのような製品は、部品の形状や構成が工夫されている分、金型なども非常にお金がかかっているわけで、たくさん売れる見込みのある車種でないとこのスタイルにはできません。GMの最近の塗装済みキットにはこれにかなり近いスタイルのものもありますが、数が出にくいネタばかりと言うことで、一般的な完成品に比べればかなり割高です。

 模型と言うのは形があるものですから、それを作る以上お金がかかります。表から見えなくても凝ったものを作ればそれだけ値段は高くなるのです。

 今は量販店が過剰なのと、製品供給が過剰なこともあって、新製品も3ヶ月も在庫で残れば原価割れのような価格で投売りされていたりで、何でも安く買えれば、と言う傾向が非常に強いのですが、こういう傾向が主流になると、本当に「良い模型」というのは出てきにくくなりますね。

 もう一つ、模型と言うものの大きな楽しみである「工作」と言う部分が完全に吹っ飛んでしまっているのも一因でしょう。模型雑誌なども広告主であるメーカーの新製品案内ばかりで、基本的な工作技法の紹介など殆どありません。完成品メーカーのカタログには当然そういう記事は無いですし、これでは初心者の方が「工作」に親しむきっかけが全く無いと言う感じです。

 完成品でアンテナや手すりを自分で取り付けるものがよくありますが、この時に瞬間接着剤を使用して失敗している事例を多く見受けます。これだって、接着剤にはいろいろな種類があること、用途によって使い分けなければならないこと、と言った基本的な情報がユーザーにきちんと伝わっていないから起きるのです。

 GMの板キットはそんな環境の中で、なかなかリニューアルも出来ず苦戦しているのが実情でしょう。30年も前の設計であれば現代製品にかなうわけが無いのですが、それをいかに違和感なく仕上げるか、ということを考えるのも楽しみの一つです。

 今回再生産が上がったこの小田急キット、中に入っているシールの内容が新しくなっていました。

G3

 厳しい中で、やれることは出来るだけやろうと言う姿勢に好感が持てました。

 工作と言うのは始めた途端上手に出来るわけではありません。手作業なのですから、慣れとかもあるし、人それぞれやり方が違う点もあります。アナログな世界ですから、やはり経験の積み重ねと言うのが大きいと思います。

 逆に言えば、腕が上がればその分さらに上のレベルを目指すようになりますから、終りが無いのです。模型があらゆる年代の人に愛好されていると言うのはそれが大きいはずです。買ってきて走らすだけだったら誰でも出来ます。しかし、同じ走らせるにしても、実車のイメージそのままにリアルな走りを求め始めると、それだけでも一つの大きなテーマになるんですよ。

 せっかく鉄道模型を始めたのに、そうした本来の部分を知る前に飽きて止めてしまう方が結構多いようですが、とても残念なことだと思います。

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コメント

鉄道模型大好きおじさん さま

 コメント有難うございます。模型というのはおっしゃる通りで、手を動かして作るというのが原点ですね。今はプラモデルでも「どこで売っていますか?」と聞かれるくらいですし。Nゲージなど、TOMIXの段ボールには食品よろしく製造年月日の記載があって、翌月まで残っていると「さっさと売って来なさい。〇〇くん!」と営業が怒られそうな感じになっていますね。
 16番の世界では、半世紀前の機関車をどうやって現代風にするかという取り組みをされている方も結構いらっしゃるのですが。

 今のNゲージ時は、いきなりスケールモデルの完成品から始まりますし、プロトタイプの列車も同じようなものになって、若い人たちが興味を示すような車種も面白みがなくなりました。まして、猫も杓子も大学まで行けという風潮になって、モノ創りというようなものが軽視されている部分もあるのかもしれませんね。

投稿: さがみ | 2020年11月21日 (土) 20時28分

最近、若い人が工作しなくなったのは、親が手を動かさなくなったからではないでしょうか?
私が子供の頃は、父親が戦車や軍艦の模型を作るのを見て育ちましたから、私も模型や工作が好きになったもんですけどね。
父親は戦車や軍艦、私は主に鉄道模型とガンプラという具合にジャンルは違いますが、継目修正や塗装などの基本テクニックは父親から教わりましたので、今でも工作や改造をする時に困らずに済んでます。

投稿: 鉄道模型大好きおじさん | 2020年11月21日 (土) 19時14分

GM派 様

 コメント有難うございます。
 
 そうです。素朴なキットというのは値段が安いから年少の入門者にもとっつきやすいし、しかし作者の考え一つでいかようにも仕上げられると言う奥の深さを併せ持っているわけですね。これはゲージを問わず共通のことだと思います。

 今時々出てくる16番の103系山手線なんかも、基になるキットは、真鍮の板を曲げて窓が抜いてあるだけのものですから、知らない人が見れば「何だこりゃ?」と言う感じなのですが、ストレートに原形にするもよし、改造を重ねた晩年の姿にするもよし、その辺に作者の宰領が入り込む余地があるわけです。

 プロトタイプの調査、模型化する上での表現方法など様々なプロセスがありますが、やはりそれらを自分で考え、工夫することに面白さがあるのも確かです。しかし今は、そういうのは「面倒くさい」の一言で片付けられてしまいます。どうせそのうちM社あたりから完成品が出るだろうし・・・、とか思われてですね。

 しかし、やっぱり自分の創意工夫の下に仕上がった作品と言うのは何者にも代えられませんね。

投稿: さがみ | 2006年9月10日 (日) 02時11分

GMの板キット、最近は人気がないみたいですね。
私が小学生の頃は価格や組みかたがプラモデル感覚で作れるので流行っていたのですが...
確かに素朴なキットですが、組み上げれば売る事など考えられないほど大切なものになりますよ。
これからも手を動かす面白さを伝えて下さい。

投稿: GM派 | 2006年9月10日 (日) 01時38分

げんた様
 コメント有難うございます。

 そうですね、鉄道模型が何故広範な年代の人々に愛好されているのか、と言えば、まずはそのテーマが身近な鉄道であること。そして、その鉄道の風景や列車をいかに自分が見たイメージ仕立てるかというところで創意工夫が求められるので、いろいろ工夫したりする楽しさ、があるからだと思います。

 いろいろ工夫していく中で自分の作品の出来栄えというのも向上していくわけですし、一つクリアーできるとまた次のテーマ、ということで、尽きるところがありません。古い作品や製品をリニューアルするのもまた面白いですし。

 たとえ完成品でも、簡単に手を加えるだけで「自分のもの」になったな、と思うものです。その辺が案外大事なポイントなのかもしれません。

投稿: さがみ | 2006年9月 9日 (土) 18時07分

 昔(25年以上かな)のTMSにはスタッフ執筆による工作記事が毎月のように載っていて、むさぼるよに読んでいました。それも縦型モーターの配線方法から塗装仕上げと、今読み返してもモデラーにとって必要な情報の宝庫とも言える内容です。当時の私の教科書であました。
 最近のTMSにはその種の記事がほとんど無いのが残念です。量販店で工作のちょっとしたコツやヒントを教えてもらえそうに無いですし、管理人さんのおっしゃる通り工作離れが進んでしまうのも仕方の無いことなんでしょうね。
 でも自分で工作して自分だけの模型を持つことは本当に楽しいですよね。たとえその模型の出来が悪くてもです。私はそう信じています。

投稿: げんた | 2006年9月 9日 (土) 15時41分

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